読書の記録『とんび』

とんび

重松清, , 2013-12-18,

「幸せゆうて、こげなもんなんか。初めてしった。幸せすぎると、悲しゅうなるんよ。なんでじゃろう、なんでじゃろうなあ…」

「あんた、坊主じゃろうが、そげな無責任なこと言うなや」 「アホ、自分のことをひとに相談するほうが無責任じゃ」

「おまえは海になれ。（中略）なんぼ雪が降っても、それを黙って、知らん顔して呑み込んでいく海にならんといけん」

「金持ちにならんでもええ、偉いひとにならんでもええ。今日一日が幸せじゃった思えるような毎日を送りんさい。明日が来るんを楽しみにできるような生き方をしんさい」

「山あり谷ありのほうが、人生の景色がきれいなんよ」

「健介のことも、生まれてくる赤ん坊のことも、幸せにしてやるやら思わんでええど。親はそげん偉うない。ちいとばかり早う生まれて、ちいとばかり背負うものが多い、それだけの違いじゃ。子育てで間違えたことはなんぼでもある。悔やんどることを言いだしたらきりがない。ほいでも、アキラはようまっすぐ育ってくれた。おまえが、自分の力で、まっすぐに育ったんじゃ」