読書の記録『世界は分けてもわからない』

トップ > 読書 > 読書の記録『世界は分けてもわからない』

読書の記録


世界は分けてもわからない

福岡伸一, , 2010-04-26, ***--

私たちは見ようと思うものしか見ることができない。そして見たと思っていることも、ある意味ですべてが空目なのである。
ヒトは常に間違える。忘れる。混乱する。だから、それをしないように注意するのではなく、それが起こらないための方法論を考えよ、あるいはミスが起こったとき、その被害が最小限にとどまるような仕組みを考えよ。それが君たちの仕事だ。
動き続けている現象を見極めること。それは私たちが最も苦手とするものである。だから人間はいつも時間を止めようとする。止めてから世界を腑分けしようとする。
この世界のあらゆる因子は、互いに他を律し、あるいは相補している。物質・エネルギー、情報をやりとりしている。そのやりとりには、ある瞬間だけを捉えてみると、供し手てと受け手があるように見える。しかしその微分を解き、次の瞬間を見ると、原因と結果は逆転している。あるいは、また別の平衡を求めて動いている、つまり、この世界には、ほんとうの意味での因果関係と呼ぶべきものもまた存在しない。世界は分けないことにはわからない。しかし、世界は分けてもわからないのである。
分けてもわからないと知りつつ、今日もなお私は世界を分けようとしている。それは世界を認識することの契機がその往還にしかないからである。