読書の記録『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド 上』

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読書の記録


世界の終わりとハードボイルドワンダーランド 上

村上春樹, , 2010-06-20, ***--

まったく上層部の人間が何を考えているのか私には見当もつかない。穴を掘ったら次はそれを埋めろと言い、埋めたら今度はまたそれを掘れと言う。迷惑するのはいつも私のような現場の人間なのだ。
期待をするから失望が生じるのだ。
何度も言うようだが、君はまだ定まってはおらん人間なのだ。迷いもあり、矛盾もあり、後悔もするし、弱くもある。
人は自らの欠点を正すことはできないのだ、人の性向というものはおおよそ二十五までに決まってしまい、そのあとはどれだけ努力したところでその本質を変更することはできない。問題は外的世界がその性向に対してどのように反応するかということにしぼられてくるのだ。
「疲れるってどういうことなのかしら?」と娘が尋ねた。 「感情のいろんなセクションが不明確になるんだ。自己に対する憐憫、他者に対する怒り、他者に対する憐憫、自己に対する怒り-そういうものがさ」
「人間は誰でも何かひとつくらいは一流になれる素質があるの。それをうまく引き出すことができないだけの話。引き出し方のわからない人間が寄ってたかってそれをつぶしてしまうから、多くの人々は一流になれないの。そしてそのまま擦り減ってしまうの」