読書の記録『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド 下』

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読書の記録


世界の終わりとハードボイルドワンダーランド 下

村上春樹, , 2010-06-27, ***--

「心とはそういうものなんだ。決して均等なものじゃない。川の流れと同じことさ。その地形によって流れを変える」
ウィスキーというのは最初はじっと眺めるべきものなのだ。そして眺めるのに飽きたら飲むのだ。綺麗な女の子と同じだ。
「懲りるのは良いことだ。人は懲りると用心深くなる。用心深くなると怪我をしなくなる。良い樵というのは体にひとつだけ傷を持っているもんさ。それ以上でもなく、それ以下でもない。ひとつだけさ。俺の言ってることはあんたわかるよな?」
「百貨事典棒というのはどこかの科学者が考えついた理論の遊びです。百科事典を楊枝一本に刻み込めるという説のことですな。どうするかわかりますか?」
しかし戦いや憎しみや欲望がないということはつまりその逆のものがないということでもある。それは喜びであり、至福であり、愛情だ。絶望があり幻滅があり哀しみがあればこそ、そこに喜びが生まれるんだ。絶望のない至福なんてものはどこにもない。
人間の行動の多くは、自分がこの先もずっと生きつづけるという前提から発しているものなのであって、その前提をとり去ってしまうと、あとにはほとんど何も残らないのだ。
「どうして離婚したの?」と彼女が訊いた。 「旅行するとき電車の窓側の席に座れないから」と私は言った。
誰も私を助けてはくれなかった。誰にも私を救うことはできないのだ。ちょうど私が誰をも救うことができなかったのと同じように。