読書の記録『まともな人』

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読書の記録


まともな人

養老孟司, , 2004-12-08, ***--

食欲や性欲を通常の欲望とすれば、金欲はメタ欲望である。欲望を満たす可能性への欲望だからである。個々の具体的欲望は、それ自体を満たせばとりあえず消失する。欲望への欲望はそうはいかない。
教育の根本はなにかというなら、話は簡単である。水と餌とねぐら、それを自分で探すようにさせる。そうすれば、アッという間に子どもは育つ。以上終わり。
一生懸命に働き、経済を発展させ、物質的に豊かな世界を作ってきたのは、なんのためか。安全快適で、暇な世界を作るためである。それなら若者が努力せず、遊んでいるとして、怒る理由はない。
そこではじめて、インドのカースト制の意味がわかる。鉛筆を落としたら拾ってはいけない。拾う人の仕事を取ることになる。生産性の向上に賭けてきた社会がそれを理解する時期が、そろそろ近づいたか、どうか。
ハンディキャップの原理=生物の出す信号は、マイナスのコストがかかったものほど信用されるというのである。(中略)(カブトムシは)喧嘩という無駄な行動ができるくらい、私は丈夫で元気なんですよ。だから私の子供を持ったほうが、あんたの子孫は繁栄しますよ。大きくて、立派な角は、雌に対するそうしたアッピールだというのである。