読書の記録『人間というもの PHP文庫 (PHP文庫)』

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読書の記録


人間というもの PHP文庫 (PHP文庫)

司馬遼太郎, , 2008-09-23, ***--

なにごとかをするということは、結局はなにかに害をあたえるということだ
「大将というものは、ほうびを与える者をいうのだ」 と、元親は明快に定義した。それ以外に大将の機能はない、とさえいえる。
まず、名将とは、人一倍、臆病でなければならない。臆病こそ敵を知る知恵の源泉というべきもので、相手の質と量、主将の性格、心理、あるいは常套戦法などについて執拗に収集する。ついで、自分の側の利点と欠点を考えぬくのである。
「人間のいのちなんざ、使うときに使わねば意味がない」
「志ほど、世に溶けやすくこわれやすくくだけやすいものはないということだ」
いい若い者が、母親の私物として出現するようになったのは日本でいえば戦後のことで、弥生式農耕が入って以来、二千年の日本の歴史からいえば、きんきん三十年にすぎず、われわれはこの異習に鈍感になるにはあまりにも歴史が新しすぎるのである。 (中略) 逆に若者の側からいえば私物として育てられ、私物としての個々の倫理関係を強いられている若者が、はたして人間の社会を構成する上でどういう結果をもたらすのか、このことは日本の社会がこぞってそれを実現しているため、やがて歴史になってみなければわからない。